Abraham Variations for Soprano and Computers(2009)

2009年に発表した、アブラハム・ヴァリエーションズです。
信仰心についてのアンケートと旧約聖書、新約聖書、コーランから、祈り、赦し、信仰、アブラハムについてのテキストをもとに作りました。
本番ではコンピュータのトラブルでアンケートのテキストが正常に表示されなかったので、記録音源をもとに映像化しました。

生身の人間とボーカロイドの混成4部合唱で、顔のついたコンピュータは口をパクパクさせてソプラノ歌手と歌っています。

コンサート本番はこんな感じでした
ソプラノ:森川栄子
アルト:巡音ルカ
テノール:鏡音レン
バス:神威がくぽ

アンケート

・信仰心についてどう思いますか?
・ユダヤ教、キリスト教、イスラム教が同じ神を信仰していることについてどう思いますか?
・なぜ信仰というものがあるのだと思いますか?

使用テキスト
・詩篇 第25篇 創世記 21:8-17
・マタイによる福音書 28:20 1:17 マルコによる福音書 16:17 ルカによる福音書 24:46,47 ヨハネによる福音書 20:23
・コーラン イムラーン一家 3:129 食卓 5:74 戦利品 8:29 イブラヒーム 14:38 信者 40:2,3

当日配布したプログラムノート

ソプラノとコンピュータたちの為の「アブラハム・ヴァリエーションズ」
この曲は、アンケート・アートという、様々な問題に対する意見をアンケートによって集め、音楽に変換する方法で作曲されている。回答のテキストを品詞分解し、品詞の種類により音程を決め、単語の長さを音符の長さとして、メロディを作り出すという、文章の構造に基づいた作曲法である。タイトルにアブラハムとあるように、預言者アブラハムの宗教的伝統を受け継ぐと称す、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の教えと、信仰心に関するアンケートのテキストによって構成されている。教典とアンケートの文章を品詞分解し、言葉の意味に囚われず文章の構造のみを用いて音楽に抽象化し、テキストとその音楽を同時に提示することによって、そのテキストは強調され、個々の差異をより顕著に現すことができる。同じ神を信仰する宗教の教えと人々の信仰心に関する意見のヴァリエーション(変奏曲)である。

編成はソプラノ、アルト、テノール、バスとコンピュータのために書かれており、今回の演奏会ではソプラノを人声、アルト、テノール、バスのパートをVocaloidと呼ばれる音声合成技術を用いたコンピュータボイスによって歌う。

2009年06月05日(金)
ニンフェアール第5回公演「息の領域」
名古屋市千種文化小劇場(愛知県)

協力
東京藝術大学
名古屋芸術大学
Gallery COEXIST
伊藤美由紀
大村久美子

※この曲は2010年に横浜の山手ゲーテ座で行われたアンケート・アート・フェスでも再演されています。そのときは大村菜穂子さんにソプラノを歌っていただきました。