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国民と国家について

5/16土〜5/27水まで、池袋アートギャザリングという展覧会でアンケート・アートの「国民と国家について」を展示していました。

今回の展示は、2014年の12月に演奏された曲のアンケートを用いた映像インスタレーションです。音楽を新しく、チェンバロの音にし、映像も新しく替えて、表示されるアンケートの背景にテレビ放送の画面を流しました。

展示の様子はこんな感じ

目安箱のようにアンケートが集まり、それを眺めている特権的な貴族のような気分を鑑賞者に体験させようと試みました。

作品を構想してる初期の段階で、宮殿の部屋のようなイメージが浮かんできたので、チェンバロで貴族の戯れような感じにしたのです。

こういうのがいい

 

展示で流していた映像をキャプチャしました。

その時間に流れているテレビ放送も、アンケートの品詞の種類によってチャンネルが切り替わります。毎日、朝11時から夜7時までアンケート回答によって生成された映像と音楽が流れます。日によってアンケートの順序も変わるので、毎日異なる音楽と映像が生成されます。

生成される映像を展示することについて

今回展示をして印象に残ったことがあります。それは、この作品では、そのときに放送されてるテレビの映像を用いたのですが、お客さんはいま放送されているものではなくて、予め録画されたものを流していると思っていたということです。

人は流れている映像がリアルタイムのものであるとは思えない、ということです。

再生される映像

どういうことでしょう?いろいろ原因はあると思いますが、映画やテレビドラマを中心に、普段我々が目にしている映像作品は、編集された過去の事柄が映ったものということです。ニュースや情報番組くらいです、リアルタイムに近い映像というのは。我々は、それに慣れてしまっている。そして、テレビも録画して後で見たり、YouTube等で過去の動画を好きな時に見て楽しんでいる。リアルタイムのライブ映像を見る機会がなくなって、録画された過去の映像を見る事があたりまえになっているということです。

さらに細かい事をいえば、テレビ放送がデジタル化した事により、家庭に送られて来るデジタル信号は、一旦変換され、テレビ画面に表示されます。その変換に遅延が生じるので、ほんの少し遅れた映像を我々は見ていることになります。テレビ放送はリアルタイムではないのです。テレビ放送の変換のずれを感じる出来事があります。僕の通っている歯科医院は、診察台ひとつひとつに大きなモニタがあり、そこにはのレントゲン写真を表示して、患者に説明したりするのですが、それ以外の時は、フジテレビが流れています。診察台も1台ではなく、5つくらいあるので、フジテレビが常に3台くらいのモニタから流されているのですが、それが微妙にずれているのです。奥の診察台から均等に1/4秒ずつくらいです。スティーブ・ライヒの「Come Out」のような感じです。音声をずらすとサ行のところが一番パーカッシヴになりますね。院内では、さらに歯を削る音、唾液をバキュームで吸う音、そして癒し系のBGM。もうカオスです。

身の回りのリアルタイム映像

もうわれわれの周りには、リアルタイムの映像はほとんど無くなってしまいました。大型バスの後ろに付けられたモニタなど何かをコントロール、操縦するための映像はリアルタイムです。刑務所の見張りのカメラもリアルタイムです。あとリアルタイムで生成されているといえばゲームですね。リアルタイム映像というものはそのくらいになってしまったということです。

残されたリアルタイム映像表現

鑑賞者の動きに反応して、映像が生成されたり、変化するインタラクティブな映像表現の場合だと、映像のリアルタイム性を感じる事が出来ると思います。同じシステムでも、もしこれがパフォーマンス作品で、パフォーマーの動きに反応したインタラクティブ作品だった場合、鑑賞者はリアルタイム性を感じる事が少なくなると思います。アンケート・アートのパフォーマンスの場合もそうです。アンケート・アートのパフォーマンスは、リストの中からその場でアンケートを選び、音楽を生成していくものなのですが、パフォーマンス終了後にお客さんに「あれって、リアルタイムで選んでいるんですよね?」と確認されます。「もしかしたら、リアルタイムじゃないかも」と思ってしまっているのでしょう。これが映像を伴わない音だけの作品だったら同じことをしていても、リアルタイム感がでると思います。それほど、「映像は過去に記録されたもの」だと我々の潜在意識に刷り込みがされていて、それはテクノロジーに精通した若い世代のほうが顕著だと思います。落語家の枕で、日曜の夕方に商店街を歩いていると、お年寄りに「笑点はいいんですか?」と聞かれるという話があったと思います。昔の人にとって、テレビは生という意識が強かったのだと思います。でも今は、録画された映像を楽しむことが中心になっているのです。見逃した番組を遡ってみる事だって出来るのですから。

以上、さんざんいろんなところで言われてきた事だと思いますが、今回の展示で印象に残ったので、まとめておきました。